平成9年6月〜平成9年11月の学会活動状況
1.地域部会
1) |
開催状況
北海道部会: 平成9年10月28日
北海道大学学術交流会館 (札幌市)
東北部会: 平成9年10月2 〜 3日
グリーンピア岩沼 (岩沼市)
関東部会: 平成9年10月4日
日本大学生物資源学部 (藤沢市)
関西部会: 平成9年10月21 〜 22日
くにびきメッセ (松江市)
九州部会: 平成9年9月18 〜 19日
別府保養所つるみ荘 (別府市)
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2) |
開催報告
北海道部会:
平成9年度北海道部会は10月28日 (火), 北海道大学学術交流会館小講堂で行われた.参加者は例年とほぼ同じく約120名であった.9時30分から一般講演としてウイルス病関係6題, 糸状菌病関係13題, 細菌・放線菌病関係4題, 感染生理関係1題, 生物防除関係1題の計25演題の発表が行われた.
昼休み後には総会が開催された.本年2月に部会長小川杢氏が転出されたため, 3月に部会幹事会で推薦された北海道大学農学部の小林喜六氏が新部会長として承認された.続いて庶務・会計報告が行われ, これらも滞りなく承認された.また本部会では例年一般講演にあわせてシンポジウム形式の談話会が行われていたが, 本年10月に札幌で「4th International Workshop of Plant Growth-Promoting Rhizobacteria」が行われ, シンポジウムの準備期間と重なったために本年に限って中止したことをご了承いただいた.
午後も引き続き一般講演が行われたのち, タ刻より約70名の参加を得て懇親会が開かれた.なごやかな歓談が2時間続き, 本年度の部会を成功裡に終了した.(秋野聖之)
東北部会:
平成9年度 (第33回) 東北部会は10月2日 (13時) から3日 (12時10分) にかけて岩沼市グリーンピア岩沼で開催された.一般講演では33題 (ウイルス・ウイロイド病16題, 細菌病3題, 糸状菌病14題) の発表があり, 117名の参加者のもと熱心な質疑応答が行われた.特別講演には日本農薬株式会社技術顧問の橋本晃氏を迎え, 「いもち病発生予察技術の展望」の題でご講演いただいた.
2日の講演終了後には, 113名の参加を得て懇親会が開かれ原田幸雄部会長の挨拶に続いて山中達名誉会員の音頭による乾杯後, なごやかな歓談が続いた.3日 (8時30分) に開かれた総会では, 会務報告, 学会や懇話会の開催状況, 学会の近況, 収支決算等の報告がなされた.また次年度の部会長および部会幹事を選任, 部会長には原田幸雄氏が再選され, 次年度開催地は福島県 (開催県幹事: 福島県農試病理昆虫部 中島敏彦氏) に決定した.(及川俊雄)
関東部会:
平成9年度関東部会は, 昨年に引き続き日本大学生物資源科学部篠原正行部会長の下で運営された.あいにくの曇天ではあったが平成9年10月4日 (土) 午前9時15分から日本大学湘南校舎第1講義室で開催された.講演題数は52題 (菌類病28題, 細菌病10題, ウイルス病14題) で, 少々過密ではあったが午前の部20題, 午後の部32題の発表があり, 広く活発な討議が行われ午後6時過ぎ予定通りに終了した.
参加人数は220余人で, 午後の部開会前に総会が行われ, 次期部会長に東京大学農学部日比忠明教授が選出された.講演終了後, キャンパス内の食堂棟2階の教職員食堂において約55名の参加を得て懇親会がもたれ, 篠原正行部会長挨拶, 土居養二東京大学名誉教授による乾杯の音頭で開宴し, なごやかなうちに懇親の実を上げた.当初は心配であったが, 曲がりなりにも2年間の部会運営を無事終了できたのは会員の皆様のご協力の賜物であると感謝する次第である.(兼平勉)
関西部会:
平成9年度関西部会は, 10月21日と22日の両日にわたって松江市「くにびきメッセ」で開催された.新幹線網から外れている山陰での開催にもかかわらず, 当日参加を含め300人近い出席者があり, 一般講演では84題 (ウイルス15題, 細菌7題, 糸状菌62題) の研究成果が2会場に分かれて発表され, 活発な質疑応答でしばしば予定時間を超過していた.第1日目の総会終了後, 「宿主特異的毒素研究の最前線をめぐって」と題して甲元啓介氏による部会長講演が行われた.
また関西部会発足50周年記念特別講演として企画されたシンポジウム「いもち病研究の現状と課題」には, 農水省東北農業試験場 石黒潔氏, 茨城大学農学部 児玉治氏, および理化学研究所 山口勇氏の3名を迎えて, それぞれ「いもち病の発生生態研究の現状と課題 −シミュレーション」, 「ファイトアレキシン −その構造・生合成・誘導機構」, 「新規なメラニン合成阻害剤カルプロパミドの作用機構」についてご講演いただき, 佐賀大学 八重樫博志氏の司会で活発な論議が続いた.
部会初日夕刻には約150名の参加を得て垣例の懇親会が盛大に行われた.部会開催委員長野津幹雄氏の歓迎挨拶, 地元の永年会員尾添茂氏の音頭による乾杯後, 2時間余にわたりなごやかな歓談が続いて終了した.
役員会は講演会前日の10月20日午後3時半から松江東急イン会議室で開催された.庶務, 会計などの報告が承認された後, 部会会則に基づく選挙により平成10年度部会長に京都大学古澤巖氏が選出されたことの報告があり, 了承された.また平成10年度の部会開催地として滋賀県立大学 (彦根市) を, 同開催委員長として但見明俊氏が選出され, さらに部会幹事として三瀬和之氏が, 開催地幹事として清水寛二氏がそれぞれ推薦された.これらの案件は21日午後の総会において提案され, 承認された.(甲元啓介)
九州部会:
平成9年度九州部会は, 九州農業研究会との共催で, 9月18日 (木) に別府市の保養所つるみ荘で開催された.当初申し込まれた講演題数は28題であったが, 3題のキャンセルがあり最終的な発表数は25題となった.そのうち, 細菌病での演題が8題, 糸状菌病5題, ウイルス・ウイルス病12題であり, 参加者による熱心な討議が行われた.
昼の休憩時間に開かれた幹事会では, 役員の交代, 会計報告, 来年度の部会開催予定地として福岡県案などが審議され, これらの案件は引き続いて行われた総会で承認された.講演終了後, 恒例になっている日本応用動物昆虫学会九州支部との合同懇親会が同所で開催され, 両部会の参加者問での相互交流を深めるのに意義のある集会となった.
翌日, 19日 (金) には, 22回目の九州部会シンポジウムが開かれ, 九州大学農学部松元賢氏による「Rhizoctonia属菌の系統分類に関する研究」, 日本植物防疫協会研究所宮崎試験場の重松辰郎氏による「各種病害に対する薬剤圃場試験の現状」, 鹿児島県農業試験場大島支場の野島秀伸氏による「奄美群島に発生するビワの果実腐敗の発生要因と防除」の演題で, それぞれ興味深い研究についての発表をしていただき, 質疑応答ののち, 正午に終了散会した.(佐古宣道)
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2.談話会,研究会
1) |
開催状況
植物感染生理談話会: 平成9年8月20 〜 22日
ホテル双葉 (新潟県南魚沼郡湯沢町)
植物細菌病談話会:平成9年11月27 〜 28日
農林水産技術会議筑波事務所 (つくば市)
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2) |
開催報告
植物感染生理談話会:
平成9年度植物感染生理談話会は106名の参加を得て, 平成9年8月20日, 21日両日にわたり, 新潟県南魚沼郡湯沢町ホテル双葉 (講演会場は湯沢町公民会館) で開催された.今回の談話会のテーマは「植物病害防除戦略としての感染生理学」とした.初日はユニークな特別講演2題に続き, 「植物病害防除戦略」として, キチン分解酵素 (遺伝子) を用いた病害の防除戦略と, 弱毒ウイルスによるCMV防除, 菌媒介性植物ウイルスの多様性 (分子機構と防除への応用) の3題, 「イネの感染生理と低抗性遣伝子」として, トランスポゾン・タギングによるいもち病菌低抗性遺伝子の単離, イネにおける感染シグナルの受容と伝達, いもち病菌の病原性の変異, いもち病菌の生成する感染誘導因子, いもち病菌感染の微細構造, イネもみ枯細菌の毒素産生関連遺伝子の6題.
翌日は「宿主と病原菌の相互作用」として, 根粒菌と植物との対話, コロナチンの化学とジャスモン酸様生理活性, ペクチンリアーゼの構造と機熊・ジャガイモ病原菌の病原性因子と宿主細胞認識機構についての4題の講演がなされた.最後に, 総合討論を行い,閉会とした.運営に際しては, 農水省北陸農業試験場, 新潟県農業総合研究所の皆様のお世話をいただいた.
記して感謝の意を表したい.
平成10年度の植物感染生理談話会は神戸大学の眞山滋志氏を中心に関西地区で開催されることとなった.
本談話会の講演集 (1部 2,500円) をご希望の方は, 談話会事務局 (新潟大学農学部内 FAX 025-263-1659) までご連絡下さい.(小島誠)
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学会関連各委員からの報告
1. |
日本学術会議の紹介
日本に学術会議があって, 日本の科学技術の発展に寄与しているということは何となく分かっていても, 実際どのような活動をし, 具体的にどのような貢献をしているかよく分からないというのが一般科学者の学術会議に対する認識であろう.
私自身も日本植物病理学会の推薦を受け, 第17期の学術会議会員 (任期3年) になるまではその程度の認識であった.
平成9年7月22日に橋本総理大臣より第17期の新会員210名に対し辞令が交付された後, 24日までの期間港区六本木にある日本学術会議の建物において, 第17期学術会議第1回総会が開催された.
初日の22日には, 冒頭, 互選により会長に吉川弘之 (前東京大学総長) , 副会長に人文科学部門から柏崎利之助 (早稲田大学政治経済学部教授) , 自然科学部門から佐々木恵彦 (前東京大学農学部長) の各氏が選出された後, 専門別に分類された7つの部会毎に部長および副部長の選出を行った.
部会の分類は第1部 (文学・社会学) , 第2部 (法学) , 第3部 (経済学) , 第4部 (理学) , 第5部 (工学) , 第6部 (農学) , 第7部 (医学・薬学) で, 第6部は会員数が30名で, 部長に長堀金造氏 (岡山大学名誉教授) , 副部長に山崎耕宇氏 (東京大学名誉教授) が選出された.
日本学術会議の組織を簡単に示すと次の通りである.

日本学術会議共通の課題は部会において, 特定の課題は常置委員会および特別委員会において, それぞれ審議され, その後総会あるいは運営審議会で承認後対外報告される.会員は部会のほか, いずれかの委員会に必ず所属する必要がある.
研究連絡委員会は各種専門分野の研究連絡を行うために設置されたものである.総会は3日間の日程で年2回開催される.部会および連合部会もほぼ総会に準じて開催されるが, 常置委員会, 特別委員会はほぼ月1回開催される (私は科学技術の発展と新たな平和問題特別委員会に所属) .
翌7月23日に16期会長の伊藤正男氏より学術会議の概略および16期の活動報告がなされたが, この伊藤前会長の講演は簡明に学術会議の内容を紹介されたもので, 私にも大変分かりやすいものであった.そこでこの伊藤前会長の講演を中心に日本学術会議について簡単に紹介したい.
I. |
日本学術会議の概略 |
1. |
設立: 昭和24年, 日本学術会議法により, 内閣総理大臣の所轄のもとに設立された特別の機関である. |
2. |
目的: 我が国の科学者の内外に対する代表機関として, 科学の向上発達を図り, 行政, 産業および国民生活に科学を反映浸透させることを目的としている. |
3. |
職務: 独立して次の職務を行うこととされている.
(1) |
科学に関する重要事項を審議し, その実現を図る. |
(2) |
科学に関する研究の連絡を図り, その能率を向上させる. |
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4. |
諮問: 政府は, 次の事項について日本学術会議に諮問することができることとされている.
(1) |
科学に関する研究, 試験等の助成, その他科学の振興を図るために政府の支出する交付金, 補助金等の予算およびその配分. |
(2) |
政府所管の研究所, 試験所および委託研究費等に関する予算編成の方針. |
(3) |
特に専門科学者の検討を要する重要施策. |
(4) |
その他日本学術会議に諮問することが適当と認める事項. |
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5. |
勧告
(1) |
科学の振興および技術の発達に関する方策 |
(2) |
科学に関する研究成果の活用に関する方策 |
(3) |
科学研究者の養成に関する方策 |
(4) |
科学を行政に反映させる方策 |
(5) |
科学を産業および国民生活に浸透させる方策 |
(6) |
その他日本学術会議の目的の遂行に適当な事項
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II. |
日本学術会議の職務
以上のように, 日本学術会議の職務には審議と研究連絡の2つがあるが, それはそれぞれ外に対し, 第1図のように機能している.

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1. |
日本学術会議の審議機能
第1図に示したように日本学術会議で審議されたことを行政に働きかける場合は, @勧告, A要望, B諮問に対する答申の3つの形で内閣総理大臣宛提出される.この中で勧告は政府に対し拘束力があり, 各省庁は必ず勧告に対応する必要がある.
ちなみに, 第16期は「脳科学研究の推進について」と「計算機科学研究の推進」の2つの勧告が出された.一方要望は16期には3つ提出されたが, 要望に対し行政は対応する必要はないとされている.また, 政府が日本学術会議に対して諮問することは極めて少なくなってきている.
その他日本学術会議で審議されたことは, 会長談話, 対外報告, 公開談話会および広報活動によって公表され, 産業および国民生活に働きかけている.16期で出された会長談話は4件, 対外報告は64件であったが, これらの働きかけは, 拘束力がないのでどの程度有効であったかは明らかでない.
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2. |
日本学術会議の研究連絡機能
現在日本には, 673,000名の科学者がいて, 何らかの学協会に属している.学術会議へ登録されている学術研究団体は約1,220で, これらの学術研究団体より選出された210名の学術会議会員によって個々の科学者と学術会議とが結ばれていることになるが, さらに学術会議には180の分野別の研究連絡委員会 (通常研連と呼称) があり, 2,000名の研連委員カ洛学術研究団体より選出されている.
第6部が世話担当の研連は26あり, 日本植物病理学会の場合, 植物防疫研運へ学術会議会員を含め2名の委員 (土崎常男, 日比忠明) を, 農業総合科学微生物学研連へ1名の委員 (道家紀志) を送っている.植物防疫研連の委員の定数は16名で植物防疫研連に委員を出している学会として, 植物病理学会, 応用動物学会, 農薬学会, 農芸化学会, 線虫学会, 雑草学会, 蚕糸学会, 昆虫学会, 農村医学会, 衛生動物学会, 林学会, 食品衛生学会, 化学調節剤学会がある.
研連は旅費の関係で年間3回の会合を開いているが, 植物防疫研連ではそのほかに任期3年間に2回の公開シンポジウムを開催している.
以上述べたように, 日本学術会議は科学者の国会とも呼べる組織であり, そこで討議される対象は日本の科学技術に関するすべての事項である.政府を拘束する勧告の数は最も多い期には20件を越えたのが, 前16期は2件と極端に減少してきた.このことは日本学術会議の地位の低下を示すものといえよう.
また, 学会に対する直接の恩恵も, 日本で国際会議を開催する時に, 学術会議が組織委員会に入り, 財政的援助がえられるくらいである.しかし, それでも日本学術会議は日本の科学技術の振興にそれなりの機能を果たしていて, 学会にも間接的な恩恵を及ぼしていることも事実である.平成9年10月22日 〜 25日に第17期の第2回総会が開催され, 17期の活動方針が採択された.
その内容については次の機会に紹介したい.
私は今後3年間, 植物病理学会のためにも日本学術会議にできるだけ寄与するよう努カしたいと考えている. (第17期会員 土崎常男)
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2. |
日本学術会議微生物学研究連絡委員会報告
日時: |
平成9年11月12日 (水) 13:30 〜 |
場所: |
日本学術会議6部会議室 |
議題: |
(1) |
新委員・自已紹介ならびに委員長, 幹事の互選18名の委員 (定数18人) のなかから, 委員長に第6部会員の三輪谷俊夫氏 (岡山県立大学保健福祉学部教授, 大阪大学名誉教授) が, 幹事に篠田純男氏 (岡山大学薬学部教授), 鈴木益子氏 (仙台真菌学研究所研究員, 東北薬科大学名誉教授), 宮治誠氏 (千葉大学真核微生物研究センター教授) がそれぞれ選出された. |
(2) |
第126回総会, 第127回総会ならびに第6部の報告と第17期の活動方針について委員長より, 日本学術会議の活動, および第17期活動計画 (申合せ), 第127回総会についての説明と, それに基づく微生物学研究連絡委員会の立場, 役割などが提案された.
特に, 食の問題, 教育・環境問題への関わり, および日本における微生物資源の保存・利用等に関する問題の重要性が提起され議論された.その現状を把握し, あり方を検討する必要性が確認され, 次回調査報告をもとに検討することとした.
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(3) |
第17期微生物学研究連絡委員会の活動方針 |
ア. |
国際会議への対応 |
@ |
IUMSについて
1998年, IUMS総会 (オーストラリア開催) 対応は, IUMS副会長の竹田美文氏 (国立国際医療センター研究所長) を責任者とし, 関連学協会との連絡・調整を図って取り組んでいく.
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A |
FAPMS (Federation of Asia Pacific Microbiological Societies) の1st Intenational Conference (1998年5月24 〜 28日) についてFAPMSへの加入には, 分担金等の課題が生じるので, 当面, 各学協会で対応していただく.
第1回会議はシンガポールで開催される.
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イ. |
科学研究費 (文部省) 補助金の分類細目についての検討継続審議課題として検討していく. |
ウ. |
公開講演会の開催
前期の講演会の状況の説明があり, 今期も, 適当な課題を設定して実施するので, 各学協会から希望する課題があったら提出することとなった.
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エ. |
バイオセイフティーに関する取り組み
一般講演等を通して考え, 特に取り上げて活動課題とはしない.
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(4) |
微生物学研究連絡委員会の次期開催日
平成10年4月16日または17日 (予定)
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(5) |
その他
なし (道家紀志)
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今後の学会活動および関連学会開催予定
国際植物病理学会および植物病理学会関連国際会議の案内
農水省の海外協カプロジェクト紹介 (作物病害関係者長期派遣プロジェクトのみ)
@ |
新規海外協カプロジェクト
プロジェクト名: |
パラグアイ小農野菜生産技術改善計画 |
期間: |
平成9年4月 〜 14年3月 |
内容: |
JICA・パラグアイ農業総合試験場との共同活動を通して, 国立農業研究所および農業普及局をサイトにして野菜の適正栽培技術の開発と普及を目的に, 小農の経営基盤強化・生活水準向上を目指して, イチゴ, トマト, メロン等の育種, 栽培, 病害虫防除分野における総合関連技術の開発を図る.
長期専門家: 石島耕 (リーダー)・松田明・佐藤俊次
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A |
現在進行中の海外プロジェクト
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パキスタン植物遺伝資源保存研究所計画
長期専門家: 三枝隆夫 (平成6年4月 〜 10年5月) |
・ |
南ブラジル小規模園芸研究協力計画
長期専門家: 柳瀬春夫 (リーダー) (平成8年12月 〜 10年12月)・小沢龍生 (平成9年4月 〜 11年4月) |
・ |
メキシコモレロス州野菜生産技術改善計画
長期専門家: 蒐木正臣 (平成8年5月 〜 10年5月) |
・ |
ブラジル・セラード農業環境保全研究計画
長期専門家: 松本和夫 (平成6年9月 〜 9年9月)
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・ |
アルゼンチン植物ウイルス研究センター計画
長期専門家: 松本省平 (リーダー) (平成7年3月 〜 9年10月)・匠原監一郎 (平成7年3月 〜 10年2月)・宇杉富雄 (平成7年6月 〜 10年5月) |
・ |
パラグアイ農業総合試験場 (CETAPAR)
長期専門家: 小野木静夫 (平成6年3月 〜 10年3月)
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・ |
ウルグアイ果樹保護技術改善計画
長期専門家: 田中寛康 (リーダー) (平成7年3月 〜 9年5月)
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・ |
タンザニア・キリマンジャロ農業技術者訓練センター計画
長期専門家: 山本剛 (平成8年5月 〜 8年11月)
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B |
終了した海外プロジェクト
・ |
ブラジル・アマゾン農業研究協力計画
長期専門家: 遠藤忠光 (平成6年 〜 9年6月)
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・ |
ドミニカ共和国胡椒開発計画フェーズII
長期専門家: 松田明 (平成2年 〜 9年7月)
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・ |
ネパール園芸開発計画フェーズII
長期専門家: 佐久間勉 (リーダー) (平成7年 〜 9年11月)
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・ |
インドネシア共和国種子馬鈴薯増産・研修計画
長期専門家: 片山克己 (平成4年 〜 9年9月)
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会員の動静
バーゲー細菌誌第2版の発行と細菌学名
Bergey's Manual of Systematic Bacteriologyは5巻に分割されて1999年から2000年にかけて改訂版が発行されることになった.グラム陰性の植物病原細菌を含むProteobacteria は第2巻に収められ, 1999年の春には入手できるはずである.
コリネ型植物病原細菌が含まれる高GC率グラム陽性菌は第4巻に収められ2000年の春に出版予定と聞いている.今回の改訂版は1984年の第1巻発行以来10数年の間に増加した約200の新属と約350の新種を収録することと, この間の分子分類の顕著な発展の成果を取り込むことを主眼にしている.
“これらの画期的な変化を反映しなければBergey's Manualは研究者にとって歴史的な価値しかもたなくなる"というバーゲー理事会の姿勢から, 第2版の変化の振幅はおよそ想像できる.Bergey's Manualは1923年以来, 細菌分類学の国際的基準として大河の流れのような存在であり続けた.
その背景には新しい分類学の発展を勇敢に取り込んできた積極的な姿勢があると考える.どの細菌学領域もこれまでその大きな流れの中で, 部分調整や時には大幅な修正をしながら対応してきた.今回も植物病原細菌で斬新的な分類が取り上げられる可能性は高い.
分類群の細分化傾向は今後も続くであろうが, これは統合化よりも実体の把握は容易なはずである.細菌種の分割によって1つの病害に複数の細菌を上げる例は今後増加するであろう (この傾向は細菌病以外でも近年とみに大きくなってきた).複合病として新たな視点からこれらの細菌病の被害を見直すときがきたのかもしれない.
新しい細菌学名が次々と発表される中で, 学会誌にどの学名を統一的に採用したらよいかという議論も盛んなようである.これもBergey's Manual改訂版が発行されてから, 部分調整が必要かどうか国際的な検討を待ってからでも遅くないと考えている.(後藤正夫)
海外留学印象記
コーネル大学植物病理学科の博士課程と授業
アメリカ合衆国コーネル大学のW. E. Fry教授のもとで科学技術庁の長期在外研究員として1年間ジャガイモ疫病に関する研究を行いました.その間, 大学院の講義を聴講する機会がありましたので, 植物病理学科の博士課程と授業について紹介します.
コーネル大学のDepartment of Plant Pathologyは日本でいえば学科に相当するのでしよう.それは, 教授等約30名, ポスドク, アシスタントや院生で構成されています.院生は博士号を得るために, 授業と実習を受講し, 博士論文を書かなければなりません.
そのためにはまず, 講義と実習を受けて植物病理学の知識を身に付ける必要があります.ある程度知識が身に付き実験がうまく進み, Special Committeeが「博士号を取得する資格がある」と認めると, "A" examという博士号を取得するための資格を得る試験を受けます.
この試験は2回以内に合格しないと博士号の取得ができなくなるという厳しいものです.それに合格してからさらに実験を行い論文を作成すると, 博士号を取得できます.
学期は秋期 (8月〜12月) , 春期 (1月から5月) です.講義の最初に講義内容のスケジュールと中間・期末試験, 実習などの点数配分が示され, 約4割以上の点数で単位が取得できます.講義は専門的で, 植物病理学の知識のなかった者を現在の植物病理学の到達点まで引き上げようというものでした.
教官は古典的論文だけでなく最近の論文のデータを基にして植物病理学の概念を説明するので, 常に最新情報を得ることが求められます.一方, 学生は講義で使用されたプリントの引用文献にもあたって理解を深めることが求められます.このため図書館は非常に充実しています.
講義は対話形式で進む部分が多く, 学生も積極的に発言し, 活気がありました.学期末には学生による教官の評価が行われます.それが教官の処遇にどの程度関わるのかわかりませんが, 教官は学生の評価を真撃に受け止めることになるでしよう.講義を聴講して, 教官からは植物病理学を伝えよう, 学生からは勉強していこうという意気込みを強く感じました.
最後に在外研究の機会を与えてくれた関係者に深く感謝いたします.(加藤雅康)
新刊紹介
「日本産植物細菌病の病名と病原細菌の学名」
西山幸司 著
細菌病について何かを書こうとするときには, 病名目録や病理学会報の新旧学名対照表, 植物病理学事典などを引っ張り出して, 病名や学名を確かめてきました.これからはその煩わしさから解放され, この本1冊で事が足ります.
本書は6つの部分からなっています.第1の部は病名目録で植物の種ごとに和名, 英名, 学名と日本での原記載文献が記載されています.第2の部では, 同千病原細菌に起因する各種植物の病名がまとめられています.第3の部では学名とその異名が発表年代順に整理されています.
第4の部は引用文献で, そのコードナンバーは著者の研究室に保存されている原著論文コピーのコードナンバーと符合しています.第5の部では細菌の分類方式の変遷などが記述されています.第6の部は索引で宿主和名, 宿主学名, 宿主英名, 病原細菌の見出し学名の索引からなっており, 相互に検索できるシステムになっています.
本書を開いたとき, 和名, 英名, 学名, 文献などがぎっしり詰まっていて, 取りつきにくい印象を受けますが, じっと見ていると行間からは細菌分類の経過を読み取れますし, 引用文献からは細菌の分類・同定に携わった人達の懐かしい名前や研究の歴史を知ることができ, ロマンをさえ感じられます.
また, 検索システムが読者の立場にたって実に便利に作られているのも大きな特徴です.本書には一貫して細菌の分類・同定の研究に取り組んでこられた著者の経験と実績が如実に反映されるとともに, 細菌病研究の発展への願いが込められているように思えてなりません.
植物病理を志す方々はもちろん, 広く植物防疫に携わる方々にも是非座右におかれることをお薦めします.(大畑貫一)
定価: 3,200円 (消費税込み)
発行: 社団法人日本植物防疫揚会
〒170-8484 東京都豊島区駒込一丁目43-11
Tel: 03-3944-1561 〜 6, Fax: 03-3944-2103
学会事務局コーナー
編集後記
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